漢方薬を飲まれた患者さんが次のように言っていました。
「イライラしたり、考えすぎたり、落ち込みやすかったり、性格の問題だからどうしようもないと思っていたことが、漢方で変わるなんて信じられない」と。
イライラしやすいとあの人は短気だからと言い、不平不満をじきに言う人は愚痴っぽいと言われ、人の不幸に感化されやすい人は涙もろいと言われ、人の話しを聞いたかと思うと「よっしゃー」とすぐ動く人は早とちりだの、おっちょこちょいなどと世間では言います。
これを性格と言います。
また、その人たちを良く観察すると、顔色が赤かったり、どす黒かったり、青白かったりするだけでなく、良くしゃべったり、不思議といつまでも寝ていられたり、先々のことに余分な気を使ってばかりいたり、何にでも無頓着であったりと行動パターンも様々です。
そして性格も行動パターンも心のあり方で決定されています。
漢方では心は五臓にあると考えています。五臓が健康であって初めて、精神や思考や情緒のバランスのとれた人格が形成されます。
どんな人でも怒ったり、悲しんだり、めいったり、思い悩んだりすることがあります。そこから抜け出せる人と、いつまでも抜け出せないで、心も身体もボロボロになり、ついには心の病として表現してしまうこともあります。
漢方で心の病を治すということは、心を抑え込むということではありません。心を抑え込んでしまったら、人間らしさまで失われてしまいます。
人間らしさを保ちつつ、心の病を治す必要があります。五臓を整え、性格も行動パターンも変わって心の病が治るのです。
本書が、心の病で悩んでおられたり、その予備群であったり、あるいはそのために将来に希望を見い出せなくなっている方に読んでいただき、ご自分に合う漢方薬を服用していただければ幸いです。
また本書は平易に書いていますが、漢方を志す臨床家にも役立つ豊富な臨床例を挙げておりますので、ぜひ臨床の参考にしていただければ幸甚です。
萩原 忠幸 |